LOTUS F1 FILE 16 - LOTUS 80

歴代ロータスF1マシンをご紹介していくLOTUS F1 FILE。第16回目となる今回は、成功作タイプ79のコンセプトをさらに突き詰めた究極のウイングカーとしてデビューするも失敗に終わったタイプ80をご紹介します。

LOTUS 80

圧倒的な強さで78年シーズンを席巻したタイプ79の成功で、ライバルに対して大きなアドバンテージを手に入れたチーム・ロータスはその手を緩めず、タイプ79のコンセプトをさらに突き詰めたマシンの開発に着手する。
ここでコーリン・チャップマンが目指したのは、シャシーで発生するダウンフォースを全てベンチュリートンネルで賄い、ドラッグになるウイングを排除した“究極のグラウンドエフェクトカー”であった。
そのためにレギュレーションで許される限界までフロントを延長し、リアエンドまでを長大なスライディングスカートで密閉。ボディ下面全体を巨大なベンチュリートンネルに仕立て、微妙な空力調整をトリムタブと呼ぶ小さなリアスポイラーで行うこととしたのである。
前後サスペンション、モノコックはタイプ79を元としていたが、モノコックに関しては79でマイルドスチールを使用していた部分にチタンを使用し、さらなる軽量化を図っていたのも特徴といえた。
ところが、発生する強大なダウンフォースに対して79譲りのシャシーの剛性が不足していたのに加え、長いサイドスカートが機能せず、ノーズが激しくピッチングするポーポイジングが発生してしまう。
その対策として挙動変化を許さない硬いサスペンションが投入されるが、問題が一向に解決しないうえにドライバーの肉体的負荷も増大。
初の実戦投入となった79年の第5戦スペインGPでは、ノーズのスカートを外して前後に巨大なウイングを装着するなど、当初のコンセプト自体が崩壊した姿となっていた。それでもアンドレッティの腕で予選4位、決勝3位という結果を残すが、モナコでは予選13位、フランスでも予選12位と低迷。続くイギリスGPにも持ち込まれるが、アンドレッティ、ロイテマンともに79をセレクトし、以降の実戦投入は見送られ、お蔵入りとなってしまった。
タイプ80は80-1、80-2の2台が製作されたが、公式戦で使用されたのは80-1のみ。2台とも現存しており、クラシック・チーム・ロータスには80-2が保存されている。
2018年のモナコ・ヒストリックを走る80/1。オーナーはイタリアのマンフレッド・ロッシ。
クラシック・チーム・ロータスが所有する80/2。80/2はノーズを短くし、リアにアウトボードブレーキを採用した改良型だが、実戦では一度も使用されずに終わっている。
80/1のシャシー。モノコックやサスペンションの形状などが基本的にタイプ79から変わっていないのがわかる。
80/1のコクピット。79に比べると幾分デザインされた印象だ。79と違いチタンやアルミハニカムが各部に使われ、軽量化と剛性アップが図られたというが、効果は薄かったようだ。
上方排気レイアウトをもつコスワースDFV。80/1のリアブレーキはインボードタイプだったが熱対策が問題で、現在はアウトボード式にモディファイされている。
ロータス自製のケースをもつヒューランドFGA 5速ギアボックスは、完全にカバーされた状態。リアウイングエンドまで伸びたスライディングスカートなど、グラウンドエフェクトを突き詰めようとしたタイプ80の特徴がうかがえる。
●LOTUS 80 Specification
・ 生産台数:2台
・ エンジン:フォード・コスワースDFV V8
・ 排気量/形式:2993cc V型8気筒 DOHC
・ 最高出力:485bhp

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